映画を1分ごとに区切って観てみた。

映画の評論、研究を行うブログです

細田守監督、初劇場版作品「デジモンアドベンチャー」を1分ごとに区切って観てみた。 後編

 

benio25250.hatenablog.com

 

 

ネタバレしかしていません。
というか20分の映画なので是非観てください。
本当にオススメです。

物語としての工夫

物語の構造、キャラクター、内容の工夫を見てみます。


怪獣と子供

今作の主人公はテレビ版の主人公、八神太一6歳とその妹ら八神光3歳です。
この2人が怪獣であるデジモンと、どう関わるかが劇場版デジモンアドベンチャーのテーマと言えるでしょう。
面白いのは光と太一、それぞれで怪獣に対する関わり方が違う事が挙げられます。

まずは八神光、
光ちゃんは3歳で首からホイッスルを下げています。
このホイッスルを吹くことで兄の太一とコミュニケーションを取っています。
おそらくこれはおしゃぶりの代わりで、おしゃぶりをを卒業させる為にお母さんが与えた物と推測できます。
つまり光ちゃんはちょっとだけ成長が遅い甘えんぼうな子なわけです。
そんな子がデジタマを見つけ、ボタモンと意思疎通をして、コロモンとはすんなりお話が出来ています。
つまり光ちゃんにとって怪獣であるデジモンはお友達、よく言われるイマジナリーフレンドのメタファーである訳です。

イマジナリーフレンドとは

dic.pixiv.net



そしてイマジナリーフレンドのデジモンは時間が経つにつれてどんどん姿を変え、大きくなってゆき、自分の手には負えなくなってきます。

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光「もうお話してくれないの?」

そして最後に消えてしまったデジモンを彼女はコロモンの名前を泣きながら呼んで、
一度イマジナリーフレンドであるデジモンとお別れをします。

これが光のデジモンアドベンチャー前日譚となります。
その後、光はアニメ版で自分のパートナーであるテイルモンと出会い、冒険をして最後にテイルモンに宝物であるホイッスルを渡し、改めてお別れする事でイマジナリーフレンドから別れ成長します。

イマジナリーフレンドがメインテーマの映画は「テッド」
いい歳こいてイマジナリーフレンドのクマのぬいぐるみから卒業出来ないおっちゃんが主人公で、
こちらはイマジナリーフレンドを受け入れ、共に暮らすという別の着地をしています。

 

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現実でも怪獣でなくてもイルカ療法や猫カフェの様に動物と触れ合うと心の癒やしや成長が促される心の触れ合いを提供する場所がありますね。

残念ながら僕が1番触れ合ったイルカはコイツです。

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では、八神太一にとって怪獣とは何でしょうか。
劇中、一緒に散歩に出てしまった光と対照的に理性的な行動を見せます。
朝起きた時もお母さんは6歳の太一と3歳の光を残して出かけてしまいます。
相当太一くんがしっかりしていないと出来ない事です。
現に太一くんは自分と光と猫のミーちゃんの朝ごはんを用意します。
(※子供だけで家に置いとくのはアメリカでは犯罪らしいです。)

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6歳にして主夫の片鱗を見せる太一。

太一は突然現れたボタモンに警戒するし、猫に負けるコロモンにツッコミをいれるし、アグモンに進化していなくなってしまった光を探しに行きます。
つまり外に勝手に出てしまう本能側デジモンや光に対して理性側を太一は請け負うわけです。

ここで面白いのが本来、子供や幼児は無秩序な怪獣として描かれる事が多いのです。
代表的なのはピクサーの映画「モンスターズインク」です。
モンスターズインクではモンスターの世界に迷い込んだブーが無秩序に暴れサリーやマイクを引っ掻き回します。
本物のモンスターが比喩であるモンスターに振り回されるという滑稽であり微笑ましい描写がなされているわけです。

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話をデジモンに戻すとデジモンのアニメやゲームでは子供達はテイマーと呼ばれデジモンに指示を出す役割を担うわけです。
これは理性的に不完全である子供が理性役を半強制的に任される事によって成長せざるを得ないドラマを生む構造を作っているのです。
つまり八神太一にとって怪獣とは無秩序の象徴と考えられます。

そしてそれは物語のラストに、グレイモンはパロットモンに火を噴きパロットモンを倒す所に現れます。
デジモンの世界の成長はボタモン、コロモンは幼年期、アグモンは成長期、グレイモンは成熟期、そして敵のパロットモンは完全体と進化してゆき。分類されます。

つまりパロットモンの方が一回りグレイモンより強いのです。
パロットモンの電撃を受けて気絶してしまったグレイモンの窮地を救ったのは太一が光のホイッスルを吹いてグレイモンを目覚めさせ、最後に太一はグレイモンに向かって「撃て!」
と指示を出します。
つまり不完全なもの同士が偶然にもお互いをカバーした結果、自分たちの能力を超えて自分たちよりも強い完全体であるパロットモンを倒すのです。

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太一「撃て!」


子供による子供の為の怪獣映画

この映画の特徴的な演出として親の顔を出さないという演出があります。

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酔って帰ってきたお父さんも出かけてゆくお母さんも顔が出ない

そしてこのグレイモンとパロットモンの戦いを見ているのも団地に住んでいる子供たちだけです。
これはこの映画が一体誰のために作られているのかを明確に示しています。
そしてこの映画内でこの戦いを目撃した子供たちは3年後TV版デジモンアドベンチャーの選ばれし子供たちとしてデジモンたちと冒険をする運命になります。

これは僕は細田守監督が何かすごい体験をした子供がいずれその影響を受けてそのすごい何かを受け継いでゆくというメッセージであると感じます。
そしてそのすごい体験は決して大人の為ではなく、大人から与えられるものでもなく、偶然居合わせたものにすげぇ!と体験するものたのだと

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後に選ばれし子供になるヤマト「すごい!」

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太一「す、すげぇ…」

このすげぇ!という体験を映画を通して伝えたかったのではないでしょうか。
この子供の為に向けられたメッセージを僕は子供の時にもろに浴びたため未だにデジモンのゲームやってたりします。

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すごい…!
のか?

余談ですが僕がこのデジモンアドベンチャーの映画を見に行った時、田舎だったので抱き合わせの映画としてアニメ映画が何本も合わせて上映されていました。
その時一緒に上映されていたのが
「劇場版カードキャプターさくら」
この映画のラストがさくらが小狼に告白するラストで当時、10歳だか9歳の僕は何故か小狼に猛烈に嫉妬したのを思い出して、当時からアニメや映画にに心奪われるの片鱗があったのだなと、なんだか切ない気持ちになりました。

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太一「撃て!」
( °∀°)「ファーオ!」

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さくら「小狼君!だーいすき!」
(((;°皿°)))「・・・!」

 

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細田守監督、初劇場版作品「デジモンアドベンチャー」を1分ごとに区切って観てみた。 前編

 

7月11日細田守監督最新作が公開ということで
僕の中で世代であり、どんな怪獣映画が出てきてもこの映画には勝てないと思えてしまうそんな思い出深い映画
「劇場版デジモンアドベンチャー」のミニッツライナーをやってみました。

ネタバレしかしていません。
というか20分の映画なので是非観てください。
本当にオススメです。

ミニッツライナー

0.東映、TOEIANIMATONの文字に長靴をはいた猫、バックで怪獣の鳴き声

1.ボレロがかかるPCを見つめる光、トイレに起きる太一

2.PCからデジタマ出現、カット、朝起きる太一、出かける母

3.目玉焼きを作る太一、イスに座ってデジタマを離さない光、ご飯に集中してデジタマを落としてしまう光

4.転がるデジタマ、太一の部屋でデジタマからボタモンが生まれる、警戒してベッドの下に逃げるボタモン

5.太一、ボタモンにスリッパを投げる、びっくりして泡攻撃、光ホイッスルでボタモンとコミュニケーションをとる

6.ボタモン、コロモンに進化する。ウンチするコロモン。

7.光からネコのエサを与えられるコロモン、食べるコロモン、ネコが怒って襲いかかる逃げるコロモン

8.コロモンと会話する光、コロモン喋れる事が分かる

9.夜、電子機器が狂い出す

10.太一のお父さん帰宅、コロモン、アグモンに進化する

11.光、アグモンの背中に乗る、アグモン窓を破壊して外に出てしまう

12.光、アグモンと夜の散歩、トラックに轢かれかけ、トラックに向かってベビーフレイム攻撃、外す

13.光を探しに飛び出す太一、空を飛んでいる飛行機に向かってベビーフレイムを飛ばすアグモン

14.空にデジタマが出現、中からパロットモンが現れる、アグモン攻撃

15.パロットモン、アグモンに向かって電撃攻撃、歩道橋を破壊、下敷きになるアグモン、太一、光

16.アグモン、グレイモンに進化!太一と光を守る、グレイモンの攻撃、パロットモン羽根が吹き飛ぶ、ヤマト「すげぇ!」

17.太一「すげぇ!」ぶつかり合うグレイモンとパロットモン、パロットモンの電撃攻撃に吹き飛ばされるグレイモン

18.気絶するグレイモン、ホイッスルで呼ぶ光、光のホイッスルをら目一杯鳴らす太一

19.グレイモン最後の一撃、太一「撃て!」
消えてしまったグレイモンとパロットモン、コロモンを呼び続ける光

20.太一「だから、僕は今ここにいる」グレイモンと再会した太一、グレイモンを抱きしめるED

構成について

大きく分けると序盤、本格的な怪獣アグモンになるまで10分
中盤、敵であるパロットモン出現に4分
終盤、怪獣バトルが5分
送り出しに1分
という4構成になっています。

1.謎の怪獣デジモンの出現

(0~10分の約10分間)
謎のタマゴ、デジタマから生まれたボタモンが太一と光を交流し進化し、本格的な怪獣アグモンになってしまいます。

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2.コロモンの進化

(10分~14分の約4分)
進化して意思疎通の不可能になったアグモンと光は街を徘徊、敵であるパロットモンが出現します。

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3.パロットモンとグレイモンの戦い

(14分~19分の約5分)
アグモンとパロットモンの対峙、アグモンは太一と光を守るため、グレイモンに進化し大怪獣バトルが始まります。

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4.デジモンとの別れと冒険の始まり

(19分~20分の約1分)
戦いが終わり、デジタルワールドでグレイモンと太一は再開し、テレビ版へ繋がる所でEDに入ります。

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プロットについて

どこからか子供の元に謎の怪獣がやってきて、もう一体の謎の怪獣と戦い、消えてしまう話になっています。


20分と言う非常に短い時間でありながら濃密で何よりカッコいい。
時間配分を見ても異常によくできています。

細田守監督初の劇場公開映画であり翌年の2000年には「デジモンアドベンチャー僕らのウォーゲーム」が公開されその後
「時をかける少女」
「サマーウォーズ」
「おおかみこどもの雨と雪」
そして最新作「バケモノの子」
を監督して有名アニメ監督になってゆく細田守監督の原点的な作品です。

脚本はデジモンシリーズやけいおん!シリーズ、最近ではガールズ&パンツァーなどを手がけている吉田玲子さん。
世のオタクはこの人にどれだけお世話になっているんだと思うほどの脚本家です。

この映画がとにかく大好きで子供の時に町の公会堂で色んなアニメ映画との抱き合わせでこの映画を観たとき正直シビレました。

現在でもポケモンやらデジモンや妖怪ウオッチなどが好きな理由はこの映画にあるのかもしれません。

次はこの映画を通じた子供と怪獣の関係について書いていこうと思います。

 

 

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「映画けいおん!」を1分ごとに区切って観てみた。後編

物語としての工夫

物語の構造、キャラクター、内容の工夫を見てみます。

映画けいおん!は何を描いていたか

けいおん!のテレビ版は非常にゆったりとした彼女たちの学園生活を丁寧に描くことによって最終話ではこの幸せな学園生活は卒業という変化によって終わりを迎えるのだという物語を描いたことによって評価を得て、またブームになったアニメでした。

 

今回の劇場版はそんなテレビ版の間の物語を描いています。
つまり唯たち3年メンバーが卒業する事、そして残されるあずにゃんの為に曲を贈ることは既にテレビ版でやったことです。
加えて今回のロンドン旅行で描かれるピンチは大本のあずにゃんへの曲作りには直接関係のないピンチばかり(あずにゃんの靴擦れ、回転ずしでの勘違いライブ、唯のレズ疑惑など)でそこまでピンチとして推進力はありません。

 

物語の弱点としてゴールがすでに見えている。先がもう決まってしまっている。という構造を持った話作りをしている訳です。
しかしそのゴールに至る過程を丁寧に丁寧に描く事によって新しいロンドン旅行というエピソード、曲を作るために試行錯誤したディテールをまた楽しむ事が出来るようにしてあるように思えました。

劇場版で再確認したけいおん!の魅力

すばらしい人間関係

冒頭彼女たちは「バンドが音楽性の違いで揉める」ごっこをしています。
自分たちのやりたい音楽や歌詞の是非について彼女たちが揉める事は殆どありません。
加えて彼女たちからすればケンカですら人間関係を高める遊びになってしまっていることから、互いを認め合いくだらないけど面白いギャグを連発し、が本編ずっと続くつまりこの人間関係で行われるいちゃつきがこの作品の大部分の物語の推進力となっていると思います。

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唯のくせに!唯のくせに!唯のくせに!

キャラクターの動きやセリフから見える愛

加えてキャラクターの台詞ややりとりも非常に面白い物で特に冒頭OP後の約7分の地点では先ほどの「音楽性の違いごっこ」の反省会をメンバーでするのですが、ここは初見の観客に向けてのけいおん部メンバーの現在の状況説明のシーンです。
具体的にはけいおん部はいい加減な部であること、3年メンバー卒業を控えていることが説明されています。

 

セリフではこれまでの思い出を語りつつ3年メンバーの卒業の話題を話しています。

キャラクターの動きを見てみます。

 

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袋が空けけられなくて踏ん張るムギ

バームクーヘンの袋を空けようとするのを手伝おうとする澪

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後輩に大学に受かったのは奇跡だと言われて泣き真似をする律

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唯のハサミのイタズラに呆れるあずにゃん、かわいいでしょ!と得意げな唯


と非常にバラバラに動いていてそれがそのまま動作がキャラクターの性格説明になっています。

こうしたキャラクターの細かい動きをこれでもかこれでもかと全編通してやり続けているのでキャラクターの動きだけでも非常に情報量が多いです。

演出の丁寧さ

冒頭のバームクーヘンの袋を空けた後、顧問の先生である澤ちゃんが登場し卒業について感慨深い思いを語ります。

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あっという間だったわねぇ、もう唯ちゃんたちが卒業なんて。と澤ちゃん

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それに対してピクッと反応し下を向くあずにゃん

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引きで全員を見せる、1人だけ寂しそうな表情を見せるあずにゃん

 

こんなに繋がりあったメンバーだからこそ、あずにゃんだけは3年メンバーの卒業を内心快く思っていないのが分かります。
このように細かい演出を丁寧に丁寧にやり続けます。

友人に指摘されて気づいたのですが、唯たちがあずにゃんの曲を作っている時にアイデアが浮かばない唯は悩みますが、それを鳥をメタファーとして表現しています。

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ロンドンにいる間、鳥がアイデアが浮かばない時は鳥が止まっています。

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ロンドンでの野外ライブで自分たちはそのままでいいんだと気付きを得た瞬間、鳥が唯の目の前をバタバタと羽ばたくことで気付きます。

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そして、曲の重要な「天使」というフレーズも風が吹いて鳥が飛翔する様子を見て閃きます。
アマチュアバンドの唯ちゃんはアイデアを効率的に出す作業を知らないので周りに鳥がいても気付きません。

しかし、ふとした体験を通じて周りから閃きを得てゆく過程が演出によってなされていると友人に言われて驚きました。

 

ラストの送り出しの場面ではさらに卒業後の彼女たちは未来に対して希望に溢れていて、来年はどんなどんな楽しい事が起きるのだろうと希望を投げて終わっています。

全体的にこの映画は娯楽映画としてサービスが多く、キャラクターも愛らしく、ラストまで気が利いていて非常に良心的であるなと感じました。

ちなみにこうして映画本編を観た後に劇場版けいおんの予告を見ると少しでも面白くなるようにバレバレのニセピンチを入れ込んでいるのも個人的には好きです。

www.youtube.com

 

「けいおん!」はいわゆる日常系の到達点と言われるアニメですが、社会的な背景の他にも作り手の細かいサービスに加え長く終わりのない日常に思えた物語として日々の一旦の終わりを描いた事によってそれが魅力的であれば魅力的であるほど終わりの間際の切なさ、感動が高まりまるので他の日常系アニメではなく、けいおん!がブームになったのはそこが要因の一つではないかと思います。

 

「映画けいおん!」を1分ごとに区切って観てみた。前編

ネタバレしかしていません。

未見の方は深夜アニメでありながらブームとなったアニメ「けいおん!」の劇場版を是非ご覧ください。

ミニッツライナー

0.松竹ロゴ、京アニロゴ

1.唯の部屋、眠っている唯、目覚ましが鳴る、止める「KーON!!」ロゴ

2.朝、登校している生徒たち、音楽室で演奏(?)する軽音部、音楽室に向かっているあずにゃん

3.あずにゃん音楽室到着、音楽性の違いで揉めている軽音部「解散!?」

4.空気を変えようとババ抜きを提案するあずにゃん、唯「あずにゃん!後で。やろう。」

5.ラジカセでエア演奏していることがあずにゃんにバレる、ムギ「じゃああずさちゃんが来たことだし」唯「お茶にしよっか。」あずにゃん「え?」

6.タイトル「劇場版けいおん」OP開始

7. 「いちばんいっぱい」 音楽に合わせて動くキャラクターたち、25秒OP終了

8.デスデビルごっこの反省会をする軽音部、呆れるあずにゃん、がペースを握られてしまっている

9.バームクーヘンを食べながら一緒の大学に入れた事を喜ぶけいおん部一同、さわちゃん登場

10.留年してるかもよ〜と脅かしをかけるさわちゃん

11.ゴミ捨てをしている3年メンバー、唯がこのままでは先輩としての威厳がないまま卒業してしまうといいなにか先輩らしい事をあずにゃんにしてあげたいと言い出す

12.話した結果、あずにゃんに何かをプレゼントするもあずにゃんが来てしまい焦って誤魔化す3年メンバーたち

13.あずにゃんの同級生で妹の憂に相談するも、もうちょっとしっかりして欲しいとピンとくる答えが得られない唯

14.あずにゃんのプレゼントに何をあげるか、部屋で独り悩む唯「なにが欲しいんだ〜!」

15.登校日に学校に集まる3年メンバー、あずにゃんのプレゼントの話をしながら教室に入る

16.クラスメイトたちが卒業旅行の話をしていてそれに興味を持つ唯、それに対し部長の律「だーめ!他所は他所!うちはうち!」

17.気が変わって猛烈に旅行に行きたがる律、それに対し説教する澪、律「ちょっとくらいいいじゃん!けち!」

18.あずにゃん部室へ、突然のあずにゃんの登場に焦る3年メンバー、ムギ焦って卒業旅行に行く話をしていたと言って誤魔化す

19.あずにゃんを誤魔化すうちに、そのまま話がズレて卒業旅行に行くことになってしまったけいおん部

20.行き先をあみだくじで決めようと提案する唯、ヨーロッパに決定!があずにゃんに怪しまれる

21.ズルをしていた事がバレる唯、顔に変な顔の似顔絵を貼られる罰を与えられる

22.公平にけいおん部のペットのスッポンモドキのトンちゃんにきめてもらうことに、見つめるけいおん部一同、が興味のないトンちゃん

23.みんなが飽き始めた頃、トンちゃんロンドンを選ぶ、澪「やった〜〜〜!!!」と尋常じゃない喜びよう

24.旅行にあずにゃんを誘う3年メンバー行きたいけど遠慮がちなあずにゃん

25.あずにゃん旅行に行くことを親に報告する、一斉に親に報告し始める3年メンバーたち、あずにゃん「私がしっかりしよう」

26.自宅で友達ののどかとお茶を飲んでいる唯、ロンドンに行く事と本当はイギリスに行きたかった事を話す、のどか「唯、ロンドンってイギリスよ」唯「え?」

27.旅行会社で予約を取るけいおん部一同、旅行会社で行き先について盛り上がりツアー旅行ではなく個人旅行にする事に

28.音楽室に向かう唯、その途中オカルト研究部と出会い、お土産何がいいかを聞く「ネッシーの写真」と言われそれを間に受けてしまう唯

29.みんなの意見を聞いて旅行の計画を立てるあずにゃん

30.あずにゃんとさわちゃんを早めに帰して、プレゼントの会議をする3年メンバー

31.あずにゃんの忘れていったギター「ムスタング」に聞いてみようとムスタングにイタズラする唯

32.イタズラした拍子にムスタングが倒れてしまいそれを受け止めたのがきっかけでインスピレーションが湧いた唯「むったんが曲って言った!」

33.あずにゃん、ムスタングを取りに戻ってくる、慌てふためく一同、その様子に怪しむあずにゃん

34.3年メンバーたち、帰宅後あずにゃんの曲を作ることに対してメールで連絡を取り合う

35.ロンドン旅行の前日、準備をする唯、いよいよ当日家族に見送られて家を出発する唯

36.駅で律、澪、あずにゃんと合流、ムギのいる駅へ向かう

37.空港に到着、混み合っているので荷物を預ける事に、空港ではしゃぎまくるけいおん部一同

38.機内に乗り込む、旅のわくわくを語り合う一同

39.いよいよ離陸、唯「あずにゃんムービング〜!」

40.唯、あずにゃんと英語で聞かれるであろう機内食に備えて日本語禁止ごっこを始める、が機内では日本語がバリバリ通じてがっかり

41.少し時間が経ち機内が暗くなり眠っている一同、唯の寝相が悪くあずにゃんを起こしてしまう、その拍子にあずにゃんへの曲のアイディアノートを見られてしまう

42.あずにゃんがノートを見ているのに気がついて飛び起きる唯、人生について考えていたと苦しい言い訳をする唯、あずにゃん「アウトローでスケールでっかいロックな唯先輩って。。。」

43.ロンドンに到着、入国審査を受けるけいおん部一同、子供と間違えられるあずにゃん

44.澪の荷物が受け取り口に流れてこない、青ざめる澪、がすぐ近くに置かれていた

45.タクシーを拾い、まずは予約を入れていたホテルアイビスへ向かう、うんてんが思ったより乱暴

46.ホテルアイビスに到着、唯車酔い

47.ホテルアイビスにチェックインしようとするも予約が取れていない、なんとか受付とコミュニケーションを取り対応してもらう、別のホテルアイビスだったようだ

48.今度は地下鉄で行こうと決める一同、あずにゃん張り切って新しい靴で来たので靴擦れを起こしてしまう

49.あずにゃんの靴を買うついでに観光する事にした一同、無事あずにゃんに合う靴を買う、そこで回転寿司の店を発見する

50.お寿司を食べようと入店、がなにやら身体のデカい店長に話しかけられる、とっさに「YES」と言ってしまう唯

51.何故か知らない間に演奏をするような雰囲気に、ムギ「なんてこと!」と店員に意見を言いに行く、キーボードを準備させるムギ、律「って、違うじゃん!」

52.演奏するしかなくなったけいおん部、緊張して目が泳ぐ唯

53.チューニングする一同、チューニングする時間がないと焦るあずにゃん

54.演奏がを始める「カレーのちライス」音楽にノッてくれるお客さん

55.演奏終了、店長にものすごく感謝されるが結局お寿司は食べられず退店

56.店の前で何がどうなっていたのかを話し合っていると律の友達のバンド「ラブクライシス」に出会う

57.ラブクライシスと間違えられていた事がわかり、ラブクライシスと別れ、ホテルにチェックインする

58.部屋で制服を来て記念写真を撮っている、律、ムギ、澪、お風呂から上がった唯、ドライヤーをそのままコンセントに挿してしまい火花を散らせてしまう

59.あずにゃんの夢、唯が本当に留年してしまう夢を見る、目覚めるあずにゃん、唯のアイディアノートをまた見て「あずにゃんLOVE」の内容に今度は引いてしまう

60.朝、ロンドン観光をするけいおん部一同、微妙にあずにゃんに避けられる唯

61. 挿入歌「Unmei♪wa♪Endless!」終わり、 トイレから出てくる一同

62.観覧車に乗ろうとするがビビりまくる澪、しかしいざ乗ってみると1番はしゃぐ澪

63.2日目のホテル、あずにゃん、唯に襲われると勘違いしてみぞおちに肘鉄を食らわしてしまう

64.勘違いしたあずにゃんを慰める為に子守唄を歌おうとするが自分が先に寝てしまう唯

65.その後、内緒で会議している3年メンバー、眠っていたあずにゃんが起きる

66.唯が内部扉を通って自分の部屋に戻る、とそこに寝ぼけたあずにゃんがやってきて唯と入れ違い

67.あずにゃんと唯、入れ違い、ぐるぐると部屋の間を回ってしまう、ホテルに電話がかかってくるがタイミング悪く切れてしまう

68.3日目あずにゃんの曲のアイディアが浮かばない唯

69.楽器屋に来ても曲の事を考えて心ここに在らずな唯

70.律にラブクライシスからライブに出てみないかと連絡がくる

71.ライブに出たいという唯、全員でライブに参加する返信メールを送る

72.飛行機の時間に間に合うかと心配になるメンバーたち「大丈夫だよ!」と唯

73.明日のライブの話し合いをするけいおん部、夜中何かアイディアが浮かびかける唯

74.次の日、ムギ自分のキーボードをロンドンに送っていた

75.ライブ会場でラブクライシスとあうけいおん部、屋外のステージで演奏することに

76.制服に着替えて、楽器のセッティングをする線を繋ぐのをビビる唯

77.サワちゃん登場、余ったマイルでロンドンにやってきたという

78.サワちゃんのくノ一コスを却下、ライブ開始、ライブ終盤に飛ぶ

79.ラスト1曲「ごはんはおかず」を演奏

80.赤ちゃんが鳥を見ている、その鳥が唯の目の前を飛んで行く、アドリブでリピートをかける唯

81.演奏終了「スカイハイ!」飛行機の時間ギリギリになり走る唯たち

82.タクシーで移動するけいおん部、あずにゃん疲れて眠ってしまう

83.唯、あずにゃんへの曲は特別な何かではなくいつも作っている自分たちの曲でいいのだと気がつく、帰国

84.帰国後の登校日、クラスメイトに卒業ライブを持ちかけられ、教室でライブをやりたいとサワちゃんに相談する

85.サワちゃん、自分たちも過去卒業ライブを教室でやった経験から形だけは反対する、私があの子たちを守るしかないと決意するサワちゃん

86.教室ライブにあずにゃんを誘う三年メンバー

87.最後の登校日、教室ライブを始めるけいおん部、生活指導の先生にライブを隠そうとするサワちゃん、がバレてしまう

88.最後の曲を演奏、登校してくる一般生徒たち

89.ライブの曲を聞いて教室に集まってくる先生や生徒たち

90.生活指導の先生も生徒たちの盛り上がりやサワちゃんの態度を見て見逃してくれる

91.ライブ後、後輩たちは授業をしている、誰もいない教室で椅子に座り佇んでいる三年メンバーたち

92.ムギが作ってきたあずにゃんに送る曲を試聴してそれを採用するメンバーたち

93.メンバーそれぞれ学外でも集まり、歌詞を持ち合って歌詞を完成させる

94.体育の授業で卓球をしながら先輩たちに何か隠し事をされている違和感をクラスメイトの憂と純に話すあずにゃん

95.部屋で完成した曲を練習する唯、が何かしっくり来ない

96.憂、唯の部屋にやってくる歌詞のノートを隠す唯、隠したノートが少し見えてしまうが知らないふりをする憂、唯、憂に卒業出来る事についてお礼を言う。

97.卒業式後、部室に向かう前に屋上に行く三年メンバー

98.4人寄り添ってあずにゃんに曲を送る緊張を語り合う

99.鳩が飛んで行く、それを見つめる唯、一方あずにゃんは教室で先輩たちに手紙を書いている

100.けいおん部の過去を振り返る三年メンバー、その中で「天使」のフレーズを思いつく

101.お茶を入れながら、音楽室であずにゃんを待つ三年メンバー

102.あずにゃん音楽室にやってくる、職員室で寄せ書きを見つめるサワちゃん

103.あずにゃん曲を聴きながら「そっか。」と今まで三年メンバーが何を隠してきたのかを悟る。三年メンバーたちが曲を作る情景。

104.曲を聴きいるあずにゃん

105.曲を聴き終わったあと立ち上がり拍手をするあずにゃん

106.卒業式後、三年メンバーたちは歩きながらこれからの事を語り合う、「そうだ、来年はどこ行く?」と駆け出す唯

107.唯「とう!」と先を歩いていたあずにゃんに抱きつく、おしまいの文字、エンディング曲

108.エンディング曲

109.エンディング曲

110.監督 山田尚子

構成について

今回の「劇場版けいおん!」は終わりから始まりまで短いものを合わせて始まりから終わりまで5構成に分かれています。

1.けいおん部はどんな部活か

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(0~約7分の約7分)
今作の主人公、平沢唯が朝目覚めるところから始まりバンドごっこをした後、お茶を飲む所でOPというかなり部活としてゆるゆるな部活であるという説明がなされます。

2.けいおん部、卒業旅行にロンドンへ行くことに

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(約7分~43分の約36分)
残される後輩のあずにゃんに曲を贈る話を計画するが話がズレて流れで卒業旅行にロンドンに行くことに決まります。

3.ロンドン入国、そして帰国

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(約43分~83分の約40分)
ロンドンに到着したけいおん部は旅行をエンジョイし2度のライブを経験、その中で唯ちゃんはあずにゃんに贈る曲の何かを掴み帰国します。

4.最後の卒業ライブ、そして曲の完成

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(約83分~105分の約22分)
ロンドンで掴んだアイディアを元に3年メンバーが協力をしてあずにゃんへの曲を完成させ、そしてその曲を贈ります。

5.卒業後の少しだけ先

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(約105分~110分の約5分)
3年メンバーの卒業式後、彼女らは来年への希望を語りながらEDに入ります。

プロットについて

この「劇場版けいおん!」のプロットですが、
卒業を控えた、けいおん部の3年生たちがロンドン旅行を通して、残される後輩あずにゃんの為に曲を贈る話となります。

この劇場版はテレビ版の「けいおん!」の番外編的な立ち位置にありテレビ版で描かれなかった卒業旅行やその少し先を描いた映画であります。
しかしテレビ版の再編集ではなく、冒頭のいかにけいおん部が個性的に、だらけているかという丁寧な導入から分かる通りファンに向けて、

テレビでは描かれていない新しい部分を描く気概のあるサービスが多い楽しい映画だったなと感じました。

後半はそんな劇場版の魅力を書いていこうと思います。

「ベイマックス」を1分ごとに区切って観てみた。後編

benio25250.hatenablog.com

 

ネタバレしかしていません。
観てない方は是非ディズニー映画の傑作、ドン・ホール監督作品「ベイマックス」をご覧ください。

物語としての工夫

物語の構造、キャラクター、内容の工夫を見てみます。

ベイマックスは何しにきたか?

ベイマックスは映画内では兄、タダシの死後その入れ替わる形で主人公、ヒロに関わってきます。
日常から離れた異物が少年の日常に関わる事によって少年の成長を促す話は日本では昔から愛されて来た物語です。

有名どころでは「ドラえもん」「オバケのQ太郎」
最近でいえば「妖怪ウォッチ」もその系統に入ります。

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独特な風貌で世界中で人気のドラえもん

ベイマックスは作られた目的が怪我などを治療するケアロボットです。
兄が死んだ後にやってくるケアロボットという設定だけで、よりメンタルに重きを置いた物語である事が分かります。

そしてこの物語で面白いのは中盤約60分の時点でヒロのメンタルのケアは完了するという所です。
約25分〜約60分の間ヒロは兄の死の真相を探るため、仲間たちと交流し、ヒーロースーツを作り、ベイマックスを改造します。
そしてベイマックスの飛行テストが終わった後にベイマックスはこう言います。

「ベイマックス。もう大丈夫だよ。と言われれば終了します。」

つまり、身体的にはヒロのメンタルはもう大丈夫になっているのです。

そこでヒロは
「まだダメだ」
とベイマックスの申し出を断ります。
兄の死を受け入れる事と、メンタルのケアを分けて考え、自立するまでベイマックスは離れられないのです。

 

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メンタルケアは「自立」するまでがメンタルケア

タダシはここにいます。

ヒロは仮面の男が事件の真相を掴んでいるとして、兄の死の真相が知りたいが為にベイマックスをガンガン改造します。

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思わず抱きしめたくなる私の体が台無しでは?
自分の魅惑のせくしぃーボディにこだわりのあるベイマックス

そして仮面の男の正体がキャラハン教授である事を知り酷く動揺します。

ベイマックスにとって最も重要なコアであるヘルスケアチップを取ろうとします。
タダシの死は善意の為に行動した結果招いたひどく理不尽な物であります。
しかし誰のせいにも出来ません。
その結果、ヒロは責任をキャラハン教授にぶつけ命を奪いかけます。

 

その絶妙なタイミングでタダシがベイマックスが何のために作ったかという初心に戻ります。
たくさんの人を助ける事になるぞ。たくさんだ。
タダシが死んでもタダシの思いはベイマックスがいる限り死にません。

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兄貴は死んだ!もういない!!

思いは死なない。

割と多用される手法ですが、描写が丁寧で心に響きます。


ちなみに僕はベイマックスがタダシはここにいます。と言い出した時、一瞬正義の為ベイマックスにタダシが己の意識を移植したのかと思いました。勘違いで良かった。

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悪の邪魔大王国を全滅させるという正義の為に己の意識をコンピューターに移植した鋼鉄ジーグの父、司馬遷次郎

ベイマックス。もう大丈夫だよ。

先にも書きましたが、ベイマックスはヒロが「ベイマックス、もう大丈夫だよ。」と言うまで、
自立するまで離れられません。

日常の中にベイマックスの様な異物が入り込む構造ではお別れによる成長が最もポピュラーです。

ドラえもんの例で言えば、別れを描く物語として有名なエピソードは
映画「帰ってきたドラえもん」いつまでも一緒にいられると思っていたドラえもんが未来へ帰らなければならなくなり、のび太は自立を迫られます。

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そこでのび太はいじめっこのジャイアンへの抵抗という形で自立を示します。

そしてドラえもんにはもう一つ自立の物語があります。

それは同人誌版「ドラえもん最終話」です。
この同人誌は漫画家の田嶋安恵さんが同人誌として描いたドラえもんの最終話で、
本物と見間違う程の出来の良さと、同人誌に二次創作物の著作権の問題として有名になった作品です。

ドラえもん最終話
http://www.geocities.jp/doctor_nobita/

ドラえもん最終話同人誌問題 - Wikipedia

この同人誌内ではドラえもんが電池切れを起こしてしまい、動かなくなってしまいます。
しかし本来記憶のバックアップを耳のパーツによって取っているため耳の無いドラえもん電池を交換すればドラえもんの記憶が無くなってしまいます。(※同人誌独自の設定です)
電池の取り替え方は開発者しかわかりません。

のび太は悩んだ末、動かなくなったドラえもんをそのままにしておいて、ドラえもんが記憶を維持したまま電池を交換する方法を見つけ出し、ドラえもんを復活させます。

今回のベイマックスはこちらのドラえもん最終話の構造に非常に似ています。

ベイマックスとのお別れはキャラハン教授の娘、アビゲイルを救いに行く事で起きてしまいます。
これはタダシがキャラハン教授を救いに行ったのと同じ構造で善意の為に動けば命を失うかもしれません。
そこでベイマックスは案の定、異次元の残骸からヒロとアビゲイルを庇いロケットが破損して動けなくなります。
ここでヒロは自立を迫られます。
そしてヒロは自立を選び
「ベイマックス。もう大丈夫だよ。」
とお別れをします。

その後、ヒロはベイマックスが遺したヘルスケアチップからベイマックスのボディを修復して、ベイマックスを復活させます。

ベイマックスは元々、兄タダシの作ったロボットです。
それが失われた時、自分で作り直す事でヒロはタダシからもベイマックスからも自立します。

この自分で作り直すという行為は現実社会でも自立を表す行為として現れます。
例えば、
結婚して子供を作るのも一度自分の家族の外に出て家族を作り直す。
勤めていた会社を辞めて独立するのも作り直す。

どちらにしても選ぶのは自分。
ベイマックスにもう大丈夫と言うかどうかはベイマックスは本人に選ばせるという形を取っています。 

ここがヘンだよ、ベイマックス

とはいえ、こんないい映画ベイマックスにもツッコミ所は結構あります。

ベイマックスはヒーロー映画?
ベイマックスはタダシが沢山の人を助ける為に作ったロボットです。
タダシの願いはベイマックスがヒーローとして人を助けるのではなく、むしろ量産されて一家に一台ベイマックスがいる世界です。
それにヒロたちのチームを組んだ理由は仮面の男を捕まえる事なのでヒーローを続ける目的EDにはなくなってしまっています。

そもそも邦題「ベイマックス」の原題は「BIGHERO6」です。

つまり元々ヒーロー物なものを宣伝などではヒーロー物は売れないからとあたかもそれを悟られないように宣伝していた売り方の問題なのかもしれません。

映画を観て想像していた内容との違いに驚いた方も多かったのではないでしょうか。
個人的にはED後にスタン・リーが出てきたら何にも言えません。
どう見てもヒーロー物でございます。

タダシの死は本当に事故だったの?
タダシの死は結局この話の中では事故だったのかどうか語られません、善意による理不尽な死であれば明確に事故である事を示さなければならないし、違うにしても何かしらのフォローを入れないと問題が宙ぶらりんのままです。

後半は科学でなくなる
初めは超技術にしても研究している描写や、ベイマックスがバッテリー切れを起こしたり、科学っぽい描写や制約があったものの後半は彼らのスーツや能力は制約が無くなり殆ど魔法になってしまいます。
チームで武器やスーツを開発しあってゆくヒーローはこの作品だけの貴重な特徴でピンチになった時、開発者ならではの科学の特性を活かした反撃が出来たのに、それがただのチームプレイになるのは惜しいです。

驚異的な愛おしさ、ベイマックスとその仲間たち

なんだかんだ言ってもこの映画の登場人物は非常にいい奴らで、愛らしいキャラばかりです。
それは細かいキャラのセリフや描写がテンポよく交わされる事で成り立っています。
例として各キャラの初登場シーンである、タダシがヒロを大学に連れてきた所を見てみます。

ゴーゴー登場、
ヒロに「科学オタクのラボへようこそと」ちょっとキツめに絡み、自分の電磁サスペンションの自転車を紹介、「この程度じゃダメ」と投げ捨てます。
約1分

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次にワサビ登場、レーザープラズマカッターを見せて、自分の揃えた工具がハニーレモンにばらされ怒ります。
約1分

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今度はハニーレモンがテンション高く絡んできて薬品の研究を見せます。
約1分

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フレッド登場、自分の趣味や発明の案を語ります。
約1分

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ベイマックスの登場、役割や機能、性能を説明します。
約2分

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キャラハン教授の登場、教授の壮大な理想に憧れヒロは大学に入学を決意します。
約2分

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たった約8分でこの映画に登場する主要人物がほとんど登場してどんな人物でどんな性格でどんな能力のある人間なのかが伺えます。
こういう仕掛けが細かく至る所にしてあるのです。
この魅力を見せる整理力が分かりやすさと楽しさを表現しています。

特にベイマックス。
ベイマックスは基本的にはダメロボットです。

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プログラム通りの受け答えしか出来ないし、動きも鈍い、電池が切れるとヘベレケになってポンコツになります。
しかし、人間に対して献身的で邪険に扱っても付いてきてロボットっぽくありながらひたむきさがある様に錯覚します。
更にヒロはベイマックスと交流や改造する事によって愛着を深めてゆきます。

鈍くてポンコツな動き+献身的なひたむきさ+愛着
=驚異的な愛らしさ
を兼ね備えるに至っています。

これらの細かい挙動が終盤のベイマックスとのお別れの悲しさに大きく響きます。

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激辛の手羽先を用意して
「さ〜て口から火を噴く準備はいい?明日は別の所が火を噴くほどかも」
ナチュラルに下ネタを入れてくる脇役の叔母さんまでキュートです。


見れば見るほどベイマックスは良く出来ています。

何より観た後、気持ちよく映画館を出られました。

「ベイマックス」を1分ごとに区切って観てみた。前編

日本では2014年12月に公開された「ベイマックス」そのDVDが4月に発売され、内容も非常に素晴らしい作品だったので1分ごとに区切って観てみました。

 

 


ネタバレしかしていません。
観てない方は是非ディズニー映画の傑作、ドン・ホール監督作品「ベイマックス」をご覧ください。

 

 ミニッツライナー

0.サンフランソウキョウの街並、ロボット同士が激しいバトルをしている

1.ロボットファイトに挑戦するヒロ

2.一撃でやられてしまうヒロのメガボット

3.ヤマのロボットを倒したせいでヤマに絡まれるヒロ

4.兄のタダシに救われスクーターで逃げるが警察に補導されてしまう

5.叔母さんに怒られるヒロとタダシ

6.ロボットファイトを止められないヒロを大学の研究室に連れて行くタダシ

7.ゴーゴーとワサビに出会う

8.ハニーレモンに出会う

9.フレッドに出会う

10.タダシの発明、ベイマックスに出会う

11.ベイマックスの説明、治療を受けるヒロ

12.キャラハン教授に出会うヒロ

13.キャラハン教授に刺激を受けて大学に入ること決意するヒロ

14.発表会に向けて研究を始めるヒロ、行き詰まる

15.研究が進み始める、会場、緊張しているヒロ

16.発表を始めるヒロ

17.マイクロボットの性能を見せるヒロ

18.発表大成功、マイクロボットが大人気になる

19.クレイがマイクロボットを欲しがるがキャラハン教授が反対する

20.クレイを断わるヒロ、大学に合格

21.橋の上で余韻に浸るタダシとヒロ

22.会場で火事、キャラハン教授を助けにタダシが中に、爆発

23.タダシの死、葬式、話題を変えようとする叔母さん

24.大学の仲間からムービーメール、切ってしまうヒロ

25.足をぶつけるヒロ「痛い」ベイマックス起動

26.ヒロを構ってくるベイマックス

27.マイクロボットが動いている事に気付くヒロ

28.ベイマックスがマイクロボットの行き先を調べに街に行ってしまう

29.目的地に向かってトコトコ歩くベイマックス、追いかけるヒロ、危ない

30.廃工場に到着するヒロとベイマックス、空気ピ〜ピ〜

31.浸入したヒロとベイマックス

32.大量のマイクロボットが製造されているのを発見し、仮面の男に襲われる

33.窓から逃げようとするがお腹がつっかえるベイマックス

34.警察に事件を知らせるが信じてもらえない

35.肝心な時にバッテリーが切れるベイマックス

36.家に帰ってくるヒロとヘベレケのベイマックス

37.ベイマックスを充電するヒロ

38.タダシはいつ戻りますか?タダシはここにいます。とベイマックス

39.心を治すデータを入れるベイマックス、ヒロをナデナデ、よし。よし。

40.タダシの死は事故ではなかったのではないかと思い始めるヒロ

41.ベイマックスのバージョンアップ。「思わず抱きしめたくなる私の体が台無しでは?」

42.カラテを習得するベイマックス

43.グータッチを習得するベイマックス「パララララララ♪」

44.仮面の男を探す、海で発見、隠れる

45.大学の仲間たちと出会ってしまうヒロ

46.仮面の男に見つかる、歯が立たないベイマックス、軽自動車で逃亡

47.「もういい限界!」車の運転をワサビからゴーゴーへ、フルスロットル!

48.疾走する軽、踏切で撒こうとする

49.逃げ切るが海に落ちてしまう、ベイマックス浮き輪

50.みんなでフレッドの家に避難、お金持ちのオタクでした

51.みんなで仮面の男を捕まえる作戦会議

52.クレイが犯人でないか?正体を明かして捕まえよう

53.スーパーヒーローになるぞ!それぞれのスーツを作り始める

54.各人スーツの使い方を練習する

55.それぞれ少しづつ物してゆく

56.ベイマックス2.0に、ロケットパンチ!ウィングだ!

57.ベイマックスと危なっかしく空を飛ぶヒロ

58.飛んでる事でヒロが健康になってる事を知り、飛ぶのが上手くなるベイマックス

59.一通り飛んだ後、一休み

60.ヒロが落ち着いた事を感じる「ベイマックスもう大丈夫だよと言ってもらえれば終了します。」「まだダメだ」断わるヒロ

61.スキャンで仮面の男を発見、無人島へ仲間と共に行く

62.浸入する、が慣れなくて落ち着かない5人

63.ポータルを発見、実験の録画を見る

64.ゲートの実験を見ている5人、クレイが映っている

65.アビゲイル、ポータルの中へポータル爆発、実験失敗

66.録画を観た後クレイが怪しいと判断する5人

67.仮面の男との戦い、まだまだ拙い戦い方

68.仮面の男、キャラハン教授と判明

69.復讐に燃えるヒロ、ベイマックスを暴走させる

70.ハニーレモン、ヘルスケアチップをベイマックスに戻す

71.仲間をほっといてベイマックスの修理しに家に帰ってしまうヒロ

72.ヘルスケアチップの取り出しを拒否するベイマックス、タダシの記録を再生する、失敗の日々

73.ついに成功!「あなたは幸せです」「たくさんの人を助ける事になるぞ、たくさんだ」

74.仲間に諭される「正しい事をするのよ」

75.ポータルの記録の続きを見る、キャラハン教授が関係者で娘の復讐だった事がわかる

76.キャラハン教授、クレイの本社ビルの開幕式を襲う、ポータルを使い本社ビルを破壊

77.キャラハン教授を止めにくるヒロ、止まらないキャラハン教授

78.キャラハン教授との戦い、次々と捕まる仲間

79.「見方を変えてみるんだ!」スーツの能力を使いこなし始める5人

80.作戦を立ててチームプレイ

81.ワサビ、ゴーゴー、フレッド、ハニーレモンの活躍

82.ベイマックスの活躍、仮面を奪い勝利

83.ポータルの暴走、中にアビゲイルがいる、助けに行くと決意

84.ポータルの中の異次元へ、残骸を避けながら進むベイマックスとヒロ

85.アビゲイルを発見、連れて帰る為に指示を出すヒロ

86.残骸と衝突、庇うベイマックス、ベイマックスを犠牲にしなければ助からない

87.「あなたはもう大丈夫ですか?」「ベイマックス、もう大丈夫だよ」ベイマックスとの別れ

88.ポータル内から戻って来たヒロ、キャラハン教授逮捕され、アビゲイルは病院へ

89.事件の終わり、大学へ通い始めたヒロ

90.ベイマックスのロケットパンチを部屋に飾るヒロ、手の中にヘルスケアチップが、ベイマックスの復活

91.ベイマックスと共に飛ぶヒロ、ナレーション、ヒーロー誕生!EDへ

92.ED、その後のヒロたち、

93.ED

94.日本語版ED.STORY

95.ED キャストロール

96.ED

97.ED

98.ED

99.ED

100.フレッド、父の肖像画に語りかける、隠し部屋を発見、スタンリー登場!「息子よ、語り合おうじゃないか」

 

構成について

ベイマックスははじまりから終わりまで4つの構成に分かれています。 

1.主人公ヒロの兄タダシの死

(約0~25分の約25分)

違法なロボットバトルに夢中の天才少年ヒロが兄のタダシ手助けによって夢を見つけますが、兄のタダシは事故によって亡くなってしまいます。

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2.傷心のヒロ、兄の死の真相を知るため、ヒーロースーツを作成

(約25分~60分の約35分)

兄の死によって心に傷を負ったヒロは兄の遺したロボット「ベイマックス」を使い兄の死の真相を探るためヒーローチームを結成します。

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3.兄の死の真相、そしてキャラハン教授を止める

(約60~82分の約22分)

兄の死の真相が事故であったと知ったヒロはその怒りを仮面の男の正体キャラハン教授にぶつけますが、兄のベイマックスへの思いを知り肉親の死を受け入れられないキャラハン教授を止めます。

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4.ベイマックスとの別れ、そして復活、EDへ

(約82~91分の約9分)

キャラハン教授の娘アビゲイルを救うためポータルの内部へ、そこでベイマックスは故障しベイマックスとお別れをします、そしてベイマックスが遺したコアチップから新たなベイマックスを作りヒロとベイマックスは再開をします。

 

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プロットについて

「ベイマックス」は兄の死によって心に傷を負ったヒロがベイマックスによって癒され、そして自立してゆく物語です。

1、約25分間ではヒロが夢を見つけ、叶えた所で兄が死に悲劇となり、

2.の約35分間ではタダシの死によって籠もりがちになったヒロのメンタルがベイマックスによって癒されるまでを描き、

3.の約22分間では心の調子は整ったものの兄の死を受け入れられない状態から兄の死を受け入れて、同じ境遇のキャラハン教授をら止めるまでを描き、

4、の約9分間ではベイマックスとの別れそして復活を描いています。

「ベイマックス」は構成だけでも非常にしっかりしていて驚く程、整理されていました。
1分毎で分けても、意図的にシーン毎の描写目的がハッキリしていておそらく脚本も1分1ページ1物語のハリウッドスタイルの基本を着実に守って、結果非常に情報密度も多く、それでいて分りやすい娯楽作品であるなと感じました。

後編ではそんなベイマックスの内容やテーマについて書いていこうと思います。
次に続きます。

benio25250.hatenablog.com

「かぐや姫の物語」を1分ごとに区切って観てみた。後編

ネタバレしかしていません。

未見の方は、日本を代表する高畑勲監督、「となりの山田くん」から14年ぶりの新作「かぐや姫の物語」是非是非ご覧下さい。

benio25250.hatenablog.com

 後編は「かぐや姫の物語」でもお気に入りのシーンを描いていきたいと思います。

かぐや姫の物語の中でも好きな狂った演出

じじいが現代で言えば年端もいかない少女に欲情してからの
「さながら枯れた泉が蘇ったかのよう」と結構際どい下ネタを放ちつつ秋田の頭が車輪になって独り歩きするという狂った演出

枯れた泉が蘇る秋田

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秋田の話が独り歩きする

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端から見ると少女に欲情したじじいの顔が車輪の中で回っている。

 

他にも5人の貴公子のうちの燕の子安貝を求められた石上中納言ですが、頭から直立で壺に落下してそれが原因で死亡してしまいます。
かぐや姫は貴公子たちを試した行為自体を悔やみます。

石上中納言の致命傷の受け方がちょっとコミカルすぎて面白い。

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中納言の死により新しい命が生まれるというオマケ付き

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うーむマッドだ。。。

みんな大好き御門様

かぐや姫の物語の中で個人的に一番インパクトのあるキャラクターだと思うのが御門ですが、彼は生まれてこの方自分の思い通りにならなかった事がないキャラクターとして描かれます。

脇から覗きこんで

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後ろから抱きつき

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輿に乗せて誘拐しようとします。

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なんなんだコイツ!

御門は非常に人気なようでテレビ放送後、様々なコラージュ画像が作られました。

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物語的にはかぐや姫の幸せを願う翁を含めた彼女の内面を一切考えない男共の大ボスとして登場する訳ですが、イケメンで家柄も最高なんだけど特徴的外見(アゴとか)と内面も行動も相まって特出して狂っている部分がいい感じにキモいです。
かぐや姫も御門に抱き寄られたのがきっかけで月に助けを求めてしまいます。


そんなに帝が嫌か

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妻と子供を捨ててしまう捨丸

かぐや姫は最後の最後に捨丸に一緒に逃げてほしいという願いを聞き入れて少しだけ本当はこうありたかった未来を告白し、それを味わいます。
ここだけ見れば、かぐや姫に与えられた最後のチャンスです。

捨丸の立場に立ってみます。
捨丸には既に奥さんと子供がいました。
かぐや姫が捨丸とだったら幸せになれたかもしれない未来を提示された時、捨丸は子供も奥さんも捨てて逃げる道を選んでしまいます。

捨丸にとっても自分の人生はかぐや姫同様、姫と一緒だったら幸せになれたかもという思いであり、かぐや姫と同じくらい幸せになれていたかもしれない。と今と比べて思ってしまったのだと思います。

もちろん、良いかか悪いか分かりません。
むしろ映画的にはここで妻と子を捨てるのは倫理的におかしいので登場人物たちの身勝手さが出てしまい素直に共感出来なくなるのであまり良くはないでしょう。
しかしこのタイムリミットが迫った上での最後のタイミングで妻と子供を捨てる描写をぶっこんで来られたのには心がもやりと動きました。
こんなに魅力的な現状からの脱却を提示させられたら子供捨ててでも飛びつくんじゃないか…?と。個人的に思ってしまう。

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月の住人達の理不尽さ
連れて行かれる時かぐや姫はこの世界はこんなセリフを言います。


「汚れてなんかいないわ!喜びも悲しみも、この地に生きる物はみんな彩りに満ちて…鳥、虫、草や花、人の情けを…」


物語的に言えば物語のテーマをセリフで説明してしまっています。
普通は物語のリアリティを害してしまうので歓迎されません、しかし相手は悟りの世界の無理解な月の住人達。
かぐや姫が別れを惜しむ様子や姫の語るこの世界はいかに美しいかすら「汚れ」と一刀両断します。
わざわざ言葉でもって説明するのですが、その言葉すら食い気味に断ち切って衣を着せる

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こちら側の論理を全く寄せ付けない。
かぐや姫の物語の評論で語られる月の住人達は「死」なのではないかというのも納得出来ます。
最終的には生きたいと願うかぐや姫に理不尽な死がやってくる。
だからこそ生は尊い。
実によく対比が取れていてグッときます。

一番業が深いのは何か?

このかぐや姫の物語は制作費約50億円制作期間で7年を費やし作られたのだそうです。

ドキュメンタリーではこだわりの作品を作った職人の美談として語られますが、正直このクオリティにこだわりまくって無茶をしまくっています。

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でも宮崎駿や高畑勲は気にせず作る。
それはやはり何と言っても宮崎駿と高畑勲がいなきゃ成立しないのが大きいのではないでしょうか。

president.jp

「映画は映画そのものよりも作ってる人間の方が面白い」と聞いたことがありますが、
風立ちぬといいかぐや姫の物語といい、これらの映画が正にこれに当てはまると思いました。
個人的な妄想ですが、「風立ちぬ」の堀越二郎が宮崎駿監督そのものだったように、「かぐや姫の物語」における貴族の生活をしながら苦労に憧れるかぐや姫は、なまじ予算やスタッフに恵まれているが周りや自分を追い込む高畑勲監督本人だったのではないかとぼんやり思ってしまいました。