映画を1分ごとに区切って観てみた。

映画の評論、研究を行うブログです

細田守監督、初劇場版作品「デジモンアドベンチャー」を1分ごとに区切って観てみた。 後編

 

benio25250.hatenablog.com

 

 

ネタバレしかしていません。
というか20分の映画なので是非観てください。
本当にオススメです。

物語としての工夫

物語の構造、キャラクター、内容の工夫を見てみます。


怪獣と子供

今作の主人公はテレビ版の主人公、八神太一6歳とその妹ら八神光3歳です。
この2人が怪獣であるデジモンと、どう関わるかが劇場版デジモンアドベンチャーのテーマと言えるでしょう。
面白いのは光と太一、それぞれで怪獣に対する関わり方が違う事が挙げられます。

まずは八神光、
光ちゃんは3歳で首からホイッスルを下げています。
このホイッスルを吹くことで兄の太一とコミュニケーションを取っています。
おそらくこれはおしゃぶりの代わりで、おしゃぶりをを卒業させる為にお母さんが与えた物と推測できます。
つまり光ちゃんはちょっとだけ成長が遅い甘えんぼうな子なわけです。
そんな子がデジタマを見つけ、ボタモンと意思疎通をして、コロモンとはすんなりお話が出来ています。
つまり光ちゃんにとって怪獣であるデジモンはお友達、よく言われるイマジナリーフレンドのメタファーである訳です。

イマジナリーフレンドとは

dic.pixiv.net



そしてイマジナリーフレンドのデジモンは時間が経つにつれてどんどん姿を変え、大きくなってゆき、自分の手には負えなくなってきます。

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光「もうお話してくれないの?」

そして最後に消えてしまったデジモンを彼女はコロモンの名前を泣きながら呼んで、
一度イマジナリーフレンドであるデジモンとお別れをします。

これが光のデジモンアドベンチャー前日譚となります。
その後、光はアニメ版で自分のパートナーであるテイルモンと出会い、冒険をして最後にテイルモンに宝物であるホイッスルを渡し、改めてお別れする事でイマジナリーフレンドから別れ成長します。

イマジナリーフレンドがメインテーマの映画は「テッド」
いい歳こいてイマジナリーフレンドのクマのぬいぐるみから卒業出来ないおっちゃんが主人公で、
こちらはイマジナリーフレンドを受け入れ、共に暮らすという別の着地をしています。

 

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現実でも怪獣でなくてもイルカ療法や猫カフェの様に動物と触れ合うと心の癒やしや成長が促される心の触れ合いを提供する場所がありますね。

残念ながら僕が1番触れ合ったイルカはコイツです。

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では、八神太一にとって怪獣とは何でしょうか。
劇中、一緒に散歩に出てしまった光と対照的に理性的な行動を見せます。
朝起きた時もお母さんは6歳の太一と3歳の光を残して出かけてしまいます。
相当太一くんがしっかりしていないと出来ない事です。
現に太一くんは自分と光と猫のミーちゃんの朝ごはんを用意します。
(※子供だけで家に置いとくのはアメリカでは犯罪らしいです。)

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6歳にして主夫の片鱗を見せる太一。

太一は突然現れたボタモンに警戒するし、猫に負けるコロモンにツッコミをいれるし、アグモンに進化していなくなってしまった光を探しに行きます。
つまり外に勝手に出てしまう本能側デジモンや光に対して理性側を太一は請け負うわけです。

ここで面白いのが本来、子供や幼児は無秩序な怪獣として描かれる事が多いのです。
代表的なのはピクサーの映画「モンスターズインク」です。
モンスターズインクではモンスターの世界に迷い込んだブーが無秩序に暴れサリーやマイクを引っ掻き回します。
本物のモンスターが比喩であるモンスターに振り回されるという滑稽であり微笑ましい描写がなされているわけです。

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話をデジモンに戻すとデジモンのアニメやゲームでは子供達はテイマーと呼ばれデジモンに指示を出す役割を担うわけです。
これは理性的に不完全である子供が理性役を半強制的に任される事によって成長せざるを得ないドラマを生む構造を作っているのです。
つまり八神太一にとって怪獣とは無秩序の象徴と考えられます。

そしてそれは物語のラストに、グレイモンはパロットモンに火を噴きパロットモンを倒す所に現れます。
デジモンの世界の成長はボタモン、コロモンは幼年期、アグモンは成長期、グレイモンは成熟期、そして敵のパロットモンは完全体と進化してゆき。分類されます。

つまりパロットモンの方が一回りグレイモンより強いのです。
パロットモンの電撃を受けて気絶してしまったグレイモンの窮地を救ったのは太一が光のホイッスルを吹いてグレイモンを目覚めさせ、最後に太一はグレイモンに向かって「撃て!」
と指示を出します。
つまり不完全なもの同士が偶然にもお互いをカバーした結果、自分たちの能力を超えて自分たちよりも強い完全体であるパロットモンを倒すのです。

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太一「撃て!」


子供による子供の為の怪獣映画

この映画の特徴的な演出として親の顔を出さないという演出があります。

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酔って帰ってきたお父さんも出かけてゆくお母さんも顔が出ない

そしてこのグレイモンとパロットモンの戦いを見ているのも団地に住んでいる子供たちだけです。
これはこの映画が一体誰のために作られているのかを明確に示しています。
そしてこの映画内でこの戦いを目撃した子供たちは3年後TV版デジモンアドベンチャーの選ばれし子供たちとしてデジモンたちと冒険をする運命になります。

これは僕は細田守監督が何かすごい体験をした子供がいずれその影響を受けてそのすごい何かを受け継いでゆくというメッセージであると感じます。
そしてそのすごい体験は決して大人の為ではなく、大人から与えられるものでもなく、偶然居合わせたものにすげぇ!と体験するものたのだと

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後に選ばれし子供になるヤマト「すごい!」

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太一「す、すげぇ…」

このすげぇ!という体験を映画を通して伝えたかったのではないでしょうか。
この子供の為に向けられたメッセージを僕は子供の時にもろに浴びたため未だにデジモンのゲームやってたりします。

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すごい…!
のか?

余談ですが僕がこのデジモンアドベンチャーの映画を見に行った時、田舎だったので抱き合わせの映画としてアニメ映画が何本も合わせて上映されていました。
その時一緒に上映されていたのが
「劇場版カードキャプターさくら」
この映画のラストがさくらが小狼に告白するラストで当時、10歳だか9歳の僕は何故か小狼に猛烈に嫉妬したのを思い出して、当時からアニメや映画にに心奪われるの片鱗があったのだなと、なんだか切ない気持ちになりました。

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太一「撃て!」
( °∀°)「ファーオ!」

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さくら「小狼君!だーいすき!」
(((;°皿°)))「・・・!」

 

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