「風立ちぬ」を1分ごとに区切って観てみた。前編
ネタバレしかしていません。
未見の方は、日本を代表するアニメーション作家宮崎駿の長編映画引退作を
是非是非ご覧下さい。
前回までは前編・後編の2部構成でしたが、今回から前編・中編・後編の3部構成でお届けします。
ミニッツライナー
0.スタジオジブリ作品、タイトル「風立ちぬ」
1.スヤスヤと眠る少年二郎、夢で屋根に上り飛行機に乗る
2.飛行機に乗って飛び立つ二郎
3.謎の黒い敵が出現、勇ましく戦いを挑もうとする二郎
4.メガネが張り飛行機を付き落とされたところで目覚める二郎、メガネをかけ悲しそうな顔をする
5.学校の教師から飛行機雑誌を借りる二郎
6.ケンカしたことを母にたしなめられる二郎
7.辞書を手に飛行機雑誌に夢中の二郎、邪魔してくる妹の佳代
8.目がよくなる信じて星を見つめる二郎、夢の中へ
9.夢の中の草原でカプローニと初対面、カプローニの夢の中でもあるという
10.カプローニの夢の旅客機に乗せてもらう二郎
11.カプローニの更に大きな旅客機がお客を乗せて飛んでゆく、カプローニ「どうだ美しかろう」
12.近眼でも飛行機は作れると夢をカプローニに後押しされる二郎
13.母に飛行機の設計家になると夢を語る二郎、青年になり汽車で若い女性に席を譲る二郎
14.菜穂子、お絹と初対面する二郎、飛んだ帽子をキャッチしてもらう二郎「ナイスプレイありがとう」
15.奈緒子にかけられた「風が立つ、生きようと試みなければならない」という言葉を復唱する二郎
16.地震発生、街や鉄道が揺れまくる
17.汽車が爆発すると、汽車から逃げ惑う人々、足を折って動けなくなっているお絹と菜穂子を見つける二郎
18.絹の骨を接いであげ、添え木をする二郎、地震の影響で火事が起こり始める
19.お絹をおぶって線路を歩く二郎、火の粉から飛行機が爆弾を運んでくる様子が浮かぶ
20.山の中の神社に避難、シャツに水を染み込ませ、お絹に水を飲ませてやる二郎
21.一旦お絹を神社に残し、菜穂子の実家に助けを求めに行く二郎と菜穂子
22.お絹を助けたあと、名前も言わず去る次郎、図書館へ、かなり燃えてしまっている
23.火の粉が舞う中、カプローニのポストカードを見つける二郎、妄想へ入る
24.カプローニの旅客機離陸に失敗、「撮るなぁ!」とカメラマンに襲いかかりカメラを壊してしまうカプローニ「まだ風は吹いているか?」
25.震災後、家で計算をする二郎
26.二郎と本庄飯屋で昼食を食べる「美しいだろう?」サバの骨を見るめる二郎
27.学校にお絹からお礼の手紙とシャツが届く、正門に飛び出す二郎、がお絹はいない
28.下宿に戻る二郎、女性の客が来ていると言われ目を凝らすが妹の佳代でガッカリ
29.震災後、一度だけ菜穂子の実家に行ったという二郎、だがそこは焼け野原に
30.佳代から医者になりたいという夢を聞く二郎、時間が飛ぶ、名古屋行きの電車に乗っている二郎
31.駅で本庄が待っていてくれ合流する
32.車で会社に向かう途中、銀行の取り付け騒ぎの人だかりに遭遇する
33.三菱重工業に到着、黒川に机を与えられる二郎、入社の挨拶をする
34.資料を見て戻り、また計算をする二郎、それを見つめる黒川
35.イメージの中に入る二郎、飯だと呼び戻される
36.昼休み、自分に任された取り付け金具を見に来る二郎と本庄、金具はもうすでに出来ていた「こりゃダメだ僕の缶変えていたのと同じだもの」と二郎
37.服部課長登場、自分のオリジナルの金具を勝手に設計する二郎、黒川に怒られるが課題はやっていた
38.はやぶさのテスト飛行、夢中になって見つめる二郎
39.はやぶさのスピード計測、黒川のストップウォッチが壊れ二郎が計測する
40.はやぶさ動力降下、速度に耐え切れずバラバラになるはやぶさ
41大雨、機体の残骸を回収する黒川、果てしない道が開けたと語る二郎、だがはやぶさに2号機はない
42.帰宅中の二郎、売店でシベリアを2つ買う
43.親の帰りを待つ子供たちにシベリアをあげようとして警戒され逃げられる二郎
44.シベリアの件を偽善だと本庄に指摘される二郎、自分たちの夢は矛盾だらけだと語る本庄
45.二郎と本庄ドイツへ、大量に飛ぶ飛行機を見つめる二郎
46.ドイツのP38爆撃機を見る二郎、三菱重工業はこれを買うという
47.小型機を目の前にして「美しい…」と呟く二郎、
48.ドイツの軍人と揉めるが、ユンカース博士にたしなめられる、帽子を取り頭を下げる二郎と本庄
49.P38爆撃機の飛行中の様子を見学する、機関室に入る二郎と本庄、あまりの出来の良さに感動する
50.ホテルの窓際でタバコを吸う二郎、ユンカース社はケチだと愚痴る本庄
51.ドイツの技術の高さと、日本の遅れにイライラしている本庄、散歩に出る
52.本庄「俺たちはアキレスだ」二郎「小さくても亀になる道はないのかなl」
53.スパイを追う男たち、夢の中雪原を歩く二郎
54.夢の中、日本の爆撃機が撃墜されて落ちてくる様子をみる二郎
55.夢の中の機関車に乗る二郎、カプローニ登場、引退飛行に誘われる
56.カプローニの最後の飛行機に強引に乗せられる二郎、中には溢れんばかりの人が
57.飛行機の上を歩いて行くカプローニ、ついて行く二郎
58.カプローニにピラミッドがある世界について問われる、二郎は美しい飛行機を作りたいと答える、二郎の飛行機のプロトタイプが飛んでくる
59.カプローニ「君の10年を力を尽くして生きなさい」日本に戻り部屋で定規片手に計算をする二郎
60.服部課長に艦上戦闘機の設計を任される二郎、それを受ける
61.国産の飛行機に乗る二郎と黒川、煙を噴いて油を撒き散らしている
62.現行の艦上戦闘機を見学する二郎と黒川、一機目は何とか離陸するが2機目は海に落ちる
63.今の日本の技術を目の当たりにする二郎、時間が飛ぶ二郎の飛行機のテスト飛行
64.プロペラが回り、前進、離陸する
65.また時間が飛ぶ、避暑地にやってくる二郎、丘で菜穂子が油絵を書いている
66.風が吹き菜穂子のパラソルが飛び、二郎の元へ、それに驚き受け止める二郎
67.ホテルの自室に戻ってくる二郎、女性たちが楽しそうにテニスをしているのが見える
68.記憶の中、回収された飛行機の前に佇む二郎、二郎の初めての飛行機は落ちていた
69.レストランで二郎を見つける菜穂子、目が輝く、一方二郎は食事中も上の空
70.散歩中泉の近くにやってくる二郎、菜穂子の油絵の道具を見つける
71.二郎が泉に来てくれた事に運命を感じて涙する菜穂子、二郎にお礼を言う、二郎「あっ!あの時の!」今まで忘れていた二郎
72.大雨、二人でパラソルをさしながら歩いている、お絹がお嫁に行って幸せになってると語る菜穂子
73.雨が止みそこには虹が、菜穂子を迎えに来る父、父に二郎を紹介する菜穂子
74.ベランダに出てタバコを吸う二郎、カストルプ登場
75.カストルプにエンジニアである事を見抜かれる二郎
76.ここは魔の山だと語るカストルプ、このままでは日本もドイツも破裂するというカストルプ
77.外に出て下から菜穂子の部屋を見つめる二郎
78.部屋のベランダから菜穂子部屋を見つめる二郎、明かりが点いている
79.中々現れない菜穂子に詩を詠んで紙飛行機を作り飛ばす二郎
80.屋根にに引っかかった紙飛行機を取ろうとして落ちかける、紙飛行機、菜穂子の元へ
81.菜穂子に新しい紙飛行機を作った二郎、それを菜穂子に飛ばす
82.二郎が飛ばした紙飛行機を菜穂子がキャッチ、その拍子に菜穂子が落とした帽子を二郎がキャッチ
83.カストルプの伴奏で二郎と菜穂子の父「Das gibts nur einmal」を歌い、ワインを飲むカストルプ
84.菜穂子との付き合いの許してほしいと父に言う二郎、菜穂子もそれを受けたいという
85.菜穂子結核である事を告白、それを二郎が受け止める、丘で油絵を書く菜穂子、二郎キスをする
86.本庄の飛行機を観察する二郎、「これは飛ぶ、風が立ってる」本条の飛行機が飛ぶ姿をイメージする二郎
87.本庄に自分のアイディアを託す二郎、二郎が飛行機を作るまで使わないという本庄、「早く使わせろ、待ってるぞ」
88.秘密警察に嗅ぎつけられる二郎、個室に二郎の仕事道具を運ばせる黒川
89.服部課長、黒川に隠れて車で帰る二郎、服部課長から二、三日姿を隠すように指示される
90.黒川宅で菜穂子に手紙を書く二郎、カストルプ逃亡、無事を願う二郎
91.黒川から電話、二郎に電報、菜穂子が喀血したという
92.泣きながら黒川宅を飛び出す二郎、移動中も仕事を続けるが涙が止まらない
93.東京の奈緒子の実家へ到着、窓に明かりが点いているのを見つけそのまま庭から飛び込む二郎
94.二郎がやってきたと聞き菜穂子の部屋にやってくる菜穂子父
95.二郎が帰ってしまった後、高原病院に入院することを決意する菜穂子
96.軍人との会議話を聞いていない二郎、チームで自主的勉強会に励む二郎
97.二郎の新しい飛行機の案を聞き、その飛行機が確かに飛ぶイメージが頭によぎる黒川、武器を積まなければ何とかなる、一同爆笑
98.工作課の平山技師から沈頭鋲の技術は可能だと語られる
99.高原病院で療養中の菜穂子、二郎の手紙を食い入るように読む
100.二郎に菜穂子が病院を抜け出したという電話が届く
101.二郎人ごみを掻き分け奈緒子を探す、発見する二郎
102.二郎の「帰らないで」という言葉に笑顔を見せる菜穂子、黒川宅に菜穂子を連れてきてしまう二郎
103.今すぐ結婚するという二郎、黒川さんから彼女を思うなら山に帰すべきだと言われる二郎、黒川「君のは愛情ではなく、エゴイズムではないのか」二郎「私たちには時間がありません。覚悟しています。」
104.結婚の儀式をしてくれる黒川さんと、黒川婦人
105.フラフラと倒れそうな菜穂子を抱きとめる二郎「綺麗だよ」
106.黒川夫婦にお礼を言う菜穂子、号泣する黒川さん
107.二郎と菜穂子の初夜、妹の佳代が黒川宅を訪ねてくる、やっぱり忘れている二郎
108.医者になった佳代、二郎に菜穂子の体の状態について怒る、奈緒子を思い涙を流す
109.帰ってきた二郎を出迎える菜穂子、服を畳んでくれる
110.菜穂子と手を握りながら仕事をする二郎、菜穂子にキスをする二郎
111.二郎の新しい飛行機を見学にきた本庄
112.海軍から新しい爆撃機を作れと命令されたという本庄
113.黒川宅に帰ってきた二郎、眠っている奈緒子を見つめる、新しい飛行機が完成し後は飛ばすだけだという
114.眠ってしまった二郎に自分の布団の半分をかけてやる菜穂子、そのまま二人寄り添って眠る
115.零戦のテスト飛行に向かう二郎を送り出す菜穂子、散歩に行くと黒川婦人に報告する
116.バスで移動中の佳代、どこかへ歩いてゆく菜穂子とすれ違う
117.菜穂子、みんなに黙って高原病院へ戻ってしまう、菜穂子の残した手紙を手に泣き出す佳代
118.テスト飛行が成功し、空を飛ぶ零戦を見つめる二郎、何かを察知して空を見つめる
119.零戦完成に湧く三菱社員たち
120.一面が零戦の残骸、カプローニと初めて会った草原で再会
121.カプローニと共に飛んでゆく零戦を見送る二郎、空には沢山の飛行機が
122.夢の草原で二郎を待っていた菜穂子「あなた、生きて」
123.カプローニと共にワインを飲みに行く二郎、テロップ「堀越二郎 堀辰雄 に敬意を込めて」
エンディングテーマ「ひこうき雲」
124.キャストロール、背景集
125.キャストロール、背景集
126.プロデューサー鈴木敏夫 原作・脚本・監督 宮崎駿
お わ り.
構成について
風立ちぬの構成は二郎の夢の始まりから終わりまでの8構成に分かれています。
1.少年二郎の夢と動機
(0~13分の約13分)
タイトルの風立ちぬから少年二郎が夢で飛行機を操縦するところから始まります。
2.学生二郎、震災と菜穂子との初対面
(13分~30分の約17分)
学生になった二郎、菜穂子と初対面、震災を体験します。
3.三菱重工業に就職
(30分~45分の約15分)
学校を卒業した二郎、三菱重工業に就職、はやぶさの制作に関わります。
4.ドイツへ研修旅行
(45分~59分の約14分)
はやぶさの失敗を体験後、ドイツへ技術を学びに行きます。
5.帰国、そして挫折
(59分~65分の約6分)
ドイツから帰国、艦上戦闘機の設計主任を任されますが、日本の技術不足と実力不足のため挫折してしまいます。
6.魔の山へ、菜穂子との再会
(65分~86分の約11分)
二郎、軽井沢へ休暇へ行き菜穂子と再会、恋をします。
7.菜穂子との結婚
(86分~113分の約27分)
軽井沢から戻ってきたあと仕事と恋愛の両立に四苦八苦します。
8.零戦完成、夢の果て
(113分~126分の約13分)
ついに零戦完成、カプローニと再会して菜穂子とお別れします。
プロットについて
プロットですが、「風立ちぬ」は夢に取り憑かれた男が自分の夢である零戦を挫折を経験しながら完成させる話です。
普通の映画では葛藤が物語を作り、またそれが推進力となって観客を引きつけますが、この映画では各章それぞれの葛藤が二郎に降りかかります。
1.近眼で自分では飛行機を飛ばせない
2.関東大震災を経験
3.自分たちは飛行機を作るがその夢の代わりに周りはどんどん貧しくなってしまう
4.自分たちの技術はドイツに比べ大幅に遅れている
5.実力不足から艦上戦闘機の製造に失敗
6.辛いことを忘れる事に対するツケはいつか払わなければならないと問われる
7.家庭と仕事の両立
そしてこれらの葛藤が二郎に降りかかり、その葛藤の結果の最高潮に達するのがラストのカプローニと再会する夢のシーンになります。
そしてどんなに酷い有様であっても、それでも風が吹いている間は生きねばならないというエゴイスティックでありながらも生に対する強い姿勢が全体を通して描かれます。
次に続きます。
中編では物語の中でどのような工夫がなされてるかに焦点を置いて観て、後編では個人的なオススメのシーンを紹介したいと思います。
「風立ちぬ」を1分ごとに区切って観てみた。中編 - 映画を1分ごとに区切って観てみた。