映画を1分ごとに区切って観てみた。

映画の評論、研究を行うブログです

Validation(承認)を1分ごとに区切って観てみた

 

今回のミニッツライナーはミニッツライナー勉強会として実際に仲間と集まって映像を観ながらやる体験方式でやってみました。

第1回目という事で短くて内容のあるものを考え、今回の題材は「Validation(承認)」をやってみました。

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娯楽映画としても面白く高いクオリティのものなのでオススメです。

ミニッツライナー

タイトル「承認」車の駐車に来たヨレたYシャツを着た男、承認をもらうため駐車係の元へ向かうが駐車係ニューマンに突然褒められ困惑する「あんた、本当にそう思う?」

ニューマン、次にやってきた主婦も褒める、警備員、管理者の元へ問題が起きているという、駐車場に行列が出来て困っているという管理人、ニューマンへ文句をつける

ニューマン、文句をつけれれても承認を止めず、管理人と仲良くなってしまう、管理人承認男をボスへ紹介、ボスも男に感動し他人へ紹介、ニューマンはなんと大統領を承認するまでになってしまう

承認男は世界中の人々を承認、戦争を止め、歯医者は人気者に、駐車違反を取り締まった警察まで承認、承認はブームになりテレビのレポーターに「彼にかかれば笑顔にならない人はいない」とまで言われる

免許証の写真を撮りに行くがそこで承認男、写真係の女性ビクトリアに恋をする、早速承認するがなかなか笑顔にならない

必死に承認するがビクトリアに「承認はいらない」と言われてしまう、男はビクトリアの元へ通い詰め承認するがビクトリアは中々笑顔にならない

その後も男は承認をするが笑顔にならないビクトリアに悩み、とうとう承認出来なくなってしまう

承認できなくなった承認男、お客は離れとうとう駐車場の監視員の仕事をクビになってしまう、途方に暮れ遊園地に向かった男そこで観光客に写真を撮ることを頼まれる

観光客を見ているうちに観光客を褒め始めるニューマン、観光客の笑顔を写真に撮る、どんどん観光客から写真を頼まれるようになるニューマン

その様子を見ていた職員に雇われる事になり、観光地で写真家になってゆく

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歯医者を訪れたニューマン、そこで隣のお客の免許証が笑顔なことに驚く、思わず駆け出し免許センターのビクトリアの元へ、しかし彼女はいなく別の男が写真を撮っていた

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話を聞くと免許の写真を全て笑顔に撮ってしまったせいでクビになってしまったという、ニューマン彼女を探すが見つからない、がパスポートの発行所で行列が出来ているのを見つける

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パスポートの写真撮影室に笑顔のビクトリアの姿が、ニューマンとビクトリアの再会、彼女が笑顔が出来なくなった理由は母が幼いころから重い病気になってしまったからだったという

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ニューマンが笑顔の写真を撮った中にビクトリアの母がいてニューマンと接したことで笑うようになり母が徐々に良くなったという、この恩を伝えたいとビクトリアもニューマンを探していたという

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ビクトリア、ニューマンに感謝を伝えるニューマン「そんのこと言ってくれる人いなかったよ」

ニューマンとビクトリアキスをして2人で旅行に行き駐車場で承認スタンプを押してもらう

THE END

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キャストロール

プロットについて

人を承認することが得意な男ニューマンが、次々と他人を承認してゆくことで世界を変えていきますが、

一目ぼれをしたビクトリアを笑顔に出来ずとうとうニューマン自身もスランプになってしまいます。

遊園地で他人の笑顔の写真を撮っているうちに本来の自分の姿を取り戻し、ビクトリアと再開しますが、

なんと彼女はニューマンが人々を笑顔にする過程の中で救われ笑顔を取り戻しニューマンと結ばれる。

というストーリーになっています。

構成について

1.駐車場の監視員である承認男ニューマン、世界を承認の力で変える

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0~4(約4分)

駐車券の承認係のニューマンが承認の力を使って次々と人を承認して世界を変えていってしまいます。

2.ニューマン、一目ぼれした彼女を笑顔に出来ずスランプになる

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4~7(約3分)

無敵の承認に思えたニューマンですが一目ぼれした女性、ビクトリアに全く承認が効かず遂に自分自身がスランプになってしまいます。

3、ニューマンスランプ幸せそうなカップルを笑顔にして写真に収めることでスランプを脱出

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7~10(約3分)

スランプになってしまったニューマンですが、遊園地で幸せそうな人々の笑顔を引き出す事でスランプを脱出、ついでに新しい職も得ます。

4、ビクトリアと再開、自分のやってきたことが良かったのだと知る

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10~15(約5分)

ニューマンは歯医者で笑顔の免許証を見つけ驚き、自分が笑顔にしてきた人々の中にビクトリアの母がいて、母が笑顔になった事でビクトリア自身も笑顔になっていた。

その後結ばれた2人は旅行にいきハッピーエンド

 

内容について

15分の作品を起承転結に当てはめてみるとの起の部分が4分、承の部分が3分、転の部分が3分、結の部分が5分と始めが短く、お腹が転結が一番長く、結のまとめで3分の1にの割合の5分という娯楽映画の構成としてはほぼ理想的な構成を取っています。

構成だけでもこの作品がお話として練り込みがなされていますが、内容を観るとさらに相当な情報量が15分に練り込まれているということが分かります。

 

例えば冒頭、ニューマンが駐車券の承認をもらいにきたよれよれのYシャツの男に言うセリフが「ユーアーグレイト」となっていますが、最後にビクトリアがニューマンにかける言葉は「ユーアーグレイト(ここはおそらく過去形)」

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冒頭のセリフをニューマンの行いが巡り巡ってニューマン自身に戻ってくるという冒頭を意識したセリフをわざわざ使っています。

 

その他にも細かい伏線、演出が本当に素晴らしいです。

 例えば、承認を受けず笑わない彼女にニューマンは「笑ったことはないの?」と尋ねます。するとビクトリアは「幼いころよ」と答えます。

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そこでニューマンはプレゼントをクマのぬいぐるみやお菓子、ハートの送り物など子供っぽいものに変えてます。要はビクトリアを子供の頃の笑顔に戻そうとする、というニューマンの意図が現れていて素晴らしい描写です。

 

他にも

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スランプになったニューマンが遊園地で写真を頼まれる場面でニューマンがいいなぁ君たちには笑顔になる理由があるのかと初めてニューマン自身の本音の願望が出ます。

ここが伏線です。

遊園地に来ていたカップルの姿を観てここで初めてニューマン自身の本当の欲しい望みが明らかになり、他の他人ではなくニューマン自身の本当の望みが明らかになった所からお話は収束に向かい、最後にこの言葉どおりビクトリアと旅行に行くのです。

 

 

他にも今回の勉強会の参加者の方の指摘でビクトリアを褒めるときはじめニューマンは瞳が素晴らしいというが、遊園地でビクトリアの母親を見つけた時もニューマンはビクトリアの母親のとは知らずに瞳を褒めます、どこかビクトリアの面影を見ているという細かい演出です。

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まとめ

何故こんなに面白く分かりやすいのか?

この映画の面白さ分かりやすさ一端を担っている部分として記号的な表現を一貫して同じ意味合いで使い続けるという部分があります。

 

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例えば、冒頭の駐車場の承認を貰いに来た男性、彼の服装を見てみるとなんだかヨレヨレのYシャツを着ていてネクタイも曲がっているし、顔に覇気がありません。

要はちょっと疲れてしまっている所を映像的に分かりやすい形で提示している訳です。

 

次にニューマンが彼女が笑顔になってくれず、遂にスランプになってしまう場面

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服がヨレます。

つまりこの映画の世界の中では心の安定が取れないと服装が雑になるのです。

一方、現実の世界で考えてみると例え服がヨレてしまっていても心が安定している人もいます。

ピチっとした服装よりもラフな格好の方が好きな人もいるかもしれません、つまり例外がいくらでも存在するのです。

がそこを記号的な表現であえて統一することで15分でこれだけの情報量を詰め込んでも混乱せずに観ることが出来ます。

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スランプになったニューマンから承認が貰えなくなった途端ネクタイを緩める男性

 

こうした作品内で一貫性のある記号的表現の積み重ねでこの映画は15分でありながら驚異的な情報量でなのにも関わらず分かりやすく面白い作品になっているのだと思います。

他にも他人を承認するというテーマでありながら、どんな奴でも笑顔にしてしまう男、ニューマンとどんな事があっても笑顔にならない女、ビクトリアという極端な対比を持たせる事によって深いテーマでありながら娯楽映画として面白く、分かりやすい対立構造を持たせる事も入れ込んでいます。

 

 

 

あとがき

今回、少人数で勉強会を開催してみんなでやってみましたが、15分くらいの動画を選んでみてある程度の満足度が得られたので次回は24分(30分枠のアニメ)に挑戦してみたいと思います。