映画を1分ごとに区切って観てみた。

映画の評論、研究を行うブログです

初代「ゴジラ」はどうして名作なのか?物語の構成からゴジラを観てみる

 

 

ゴジラの物語の構成

貨物船の謎の沈没

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0~21分(約21分)

貨物船「栄光丸」が謎の沈没をする。

その救助のに向かった「備後丸」も謎の沈没、大戸島の老人は伝説の怪物「呉爾羅」の仕業であると言う。

戸島で暴風雨が起こり巨大な生物が家屋を破壊、その調査の為、山根博士が大戸島に訪れるとそこには放射能を帯びた巨大な足跡が残されていた。

 

ゴジラ出現

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21~44分(約23分)

ゴジラ登場、国会で水爆実験によって古代の生物が目覚めた事が山根博士から語られる。

ゴジラの漁船襲撃が止まらず17隻の漁船が襲われたことによってフリゲート艦体がゴジラを攻撃するもゴジラは死なず。

ゴジラが上陸する危険性があるため、新聞記者が恵美子と共にゴジラ抹殺の手がかりになる芹沢博士の元を訪ねる。

恵美子にだけ秘密の研究結果を見せる芹沢博士、それに恵美子はショックを受けてしまう。

 

ゴジラ東京上陸

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44~69分(約25分)

ゴジラ東京へ上陸、駅や橋を破壊して去ってしまう。

ゴジラ抹殺の為、軍事配備が進み住民は疎開を余儀なくされ港区、品川区、大田区に完全退避命令が下される。

山根博士はゴジラを殺すことに難色を示すが、ゴジラ再度東京に上陸、高圧電流攻撃や歩兵隊、戦車隊攻撃を仕掛けるがゴジラは熱線を吐き進撃、防衛隊は全滅。

ゴジラの進撃は止まず東京は焼け野原になってしまう。

 

オキシジエンデストロイヤー使用の決意、ゴジラの最後

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69~96分(約27分)

ゴジラによる被害を見て恵美子は芹沢博士にゴジラを殺すため秘密の兵器を話を恋人の尾形に話す。

ゴジラに対して芹沢博士に恵美子と尾形は新兵器「オキシジエンデストロイヤー」の使用することを説得する。

「オキシジエンデストロイヤー」の使用を徹底的に拒否する芹沢博士、しかし恵美子の説得とテレビから流れる乙女たちの平和の祈りの歌を聴き、新兵器のたった一度の使用を決意する。

芹沢博士自ら、尾形と共にゴジラ抹殺の作戦に挑むも、尾形の命綱を切り尾形に「幸福に暮らせよ、さよなら、さよなら」

と言い残しオキシジエンデストロイヤーを使用、ゴジラと共に運命を共にする。

芹沢博士とゴジラの最後を見届けた山根博士は「あのゴジラが最後の一匹だとは思えない」といいゴジラに対して一同敬礼をする。

 

 

ゴジラの構成について

ゴジラの構成は時間的にはほぼ統一で25分前後でした。

シーンについてもここで何を見せるかがハッキリとしていて名作の名にふさわしい見やすい、整理のされ方です。

ゴジラの素晴らしい所はきちんとエンターテイメント映画として娯楽的にも見せ方を考えていて、脚本からも完成度の高さが伺えます。

 

冒頭からゴジラの登場まで22分、その間はゴジラによる被害の様子を映して恐怖の大元の出現を引っ張っています。

印象的なのは被害の描写を人が死んでしまう様子で表現、遺族も海上保安庁に押しかけ、何か情報はないのかと大騒ぎです。

こうしたゴジラの脅威を民間人の様子で丁寧に表現しています。

 

今年公開されたシン・ゴジラゴジラの破壊によって民間人は死にますが、その時に父や兄を呼ぶ少年や、母を呼ぶ子供などの描写もなく、ゴジラの尻尾の出現も10分から15分ほどだったと記憶しているのでテキパキとしています。

導入までの時間が短くなったのは構成の時代的な変化だと個人的には思いますが、冒頭だけ見てもシン・ゴジラは初代ゴジラをリスペクトはしつつも、初代ゴジラとは描き込みに差が大きいので別の表現に走っていることが分かります。

 

 

そもそもこの初代ゴジラはなんで名作なのか?

そもそも何故「ゴジラ」は名作映画として語られるのでしょう。

どうしても長くなってしまうのですがここは出来るだけ端的に、短く書いていこうと思います。

 

テーマが優れていた

初代ゴジラが事あるごとに取り上げられ、教科書にも取り上げられる理由は色々ありますが、ザックリ端的に言えば、終戦から9年後、復興しかかった日本で「戦争」をテーマにしたことではないでしょうか。

ゴジラの進路は東京大空襲の進路であったというのは有名な話ですが、僕らがシン・ゴジラで3・11を想起したようにみんなが共感した事、テーマの描き込みがリアルで細かかった事でしょう。

 

テーマの魅力は大まかに2つ

 

1つみんなが共感すること

パッと聞いた時、面白そうなテーマなのだろうか?

 

ただの少年が海賊に憧れ、尊敬する海賊から悪魔の能力と海賊としての心意気を学んで成長し、海賊王になるため故郷を飛び出し仲間探しの旅に出る「ワンピース」

 

孤児になり引き取られた先で虐げられている少年が、魔法と自分の出生の秘密に目覚め才能を開花させるため魔法学校に入学する「ハリーポッター

 

どちらも思春期の少年の変化に合わせて、仲間や特殊な能力に目覚め知らない世界に(社会に)飛び出す話なので少年たちは共感を持ちやすく受け入れやすい内容です。

 

いわゆるハイコンセプト映画というものですね。

 

1つニッチでも描き込みがリアルに感じられるほど細かいこと

ニッチすぎてもはやこの映画でしか見られないほど描き込みが細かい内容だろうか?

 

精神病棟をドキュメンタリーで描き、精神病の人々がどのような事を考え、日々生活しているのかを描いた映画「精神」

 

美しい飛行機を作りたいと願うが飛行機を作れば戦争の道具になってしまう、しかしそれでも主人公は戦争に使われると分かっていても自分のエゴを突き通し遂にゼロ戦を完成させる映画「風立ちぬ

 

どちらもこの映画でしか見られない物語、心情、描写の細かさです。 

こちらはいわゆるソフトストーリー映画と呼ばれますね。

 

テーマが2つバランスよくあると名作になる

ゴジラは怪獣パニック映画です。

ゴジラが暴れ、いかに恐ろしい存在であるか、自分たちの知っている町が恐ろしい存在にどんどん壊される。

これだけでかなりエンターテイメント性が高く、更に人間関係でも尾形と恵美子という恋愛結婚をしようとしている2人が登場し、いかに2人の恋愛を父の山根博士に認めて貰うかという物語が展開します。

意外にもゴジラには共感を呼びやすいと言われる恋愛要素があるんですね。

 

さらにゴジラの場合、「戦争」というニッチなテーマでも時代的に「戦争」をみんなが覚えていたので共感しただろうし、復興した東京が火の海になり、母が死んで「おかあちゃーん!!」と泣き叫ぶ子供に尋常ではないリアルさを感じたはずです。

 

初代ゴジラが他のエンターテイメント性の高いゴジラより高級感を持って語られたり、一部でありがたがられる理由はここにあるのではと個人的には思います。

 

 

 

もう一つゴジラが名作な理由として単純に作話として優れています。

ここでは大まかに人物配置だけ抜粋してみました。

 

簡単な人物配置

 

ゴジラ(戦争の象徴)

↑↓

芹沢博士(戦争によって人生が狂ってしまった人)

↑↓

尾形、恵美子(戦争に襲われる側、戦争後の人間)

↑↓

山根博士(ゴジラに共感してしまう側)

 

「戦争」というものを描くのにメインのキャラクターにそれぞれ違う立ち位置に立たせて作話しています。

ゴジラは破壊の限りを尽くすし無慈悲です。

芹沢博士は戦争を引きずって戦中の研究を個人で続け水爆以上の兵器を作ってしまいます。

尾形と恵美子はゴジラは殺すべきといい、各々の恋愛の話ばかりしています。

山根博士はゴジラが殺されそうになればしょんぼりして、水爆の被害者のゴジラに共感してこれを研究すべきと主張します。

 

それぞれが関係し合って1つの「戦争」に帰結しているから作話としてスッキリしています。

メインの人物配置だけでもかなりそれぞれいい味がでる按配です。

 

 

シン・ゴジラについて

シン・ゴジラは現在大ヒットしてもう様々な視点で、様々な立場から語られていますが、個人的には怪獣が好きだったのでシン・ゴジラは大好きな映画です。

シン・ゴジラのおかげでこうして初代ゴジラを見直して整理できたし、みんながあれやこれやと映画に対して色々な事を語っている事も好きなのでその点をもっても「シン・ゴジラ」を作った庵野秀明氏には感謝したいですね。

 

 

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